夏を超えた映画【洋画篇Vol.1】クリント・イーストウッド作品が誘う異空間への旅

皆様、残暑お見舞い申し上げます。

お盆休み真っ只中、ステイホームの人も不要不急以外の外出組の人もNew Life Styleしてますか?今日はそんな皆様に、お家でのまったり時間を異空間への旅へと誘うおすすめ映画を紹介します。第一回目は、「この監督作品に外れなし」と謳われるクリント・イーストウッド作品を3つ。


役者時代のクリント・イーストウッドの代表作といえばダーティーハリー。

「Go ahead, make my day.」の名セリフと共にタフなヒーロー像が頭にこびりついて、共和党支持の保守的な政治姿勢からもちょっと敬遠したいハリウッドセレブでしたよ。ええ。ところがどっこいこのお方、年齢を重ねるごとに見事な内股膏薬ぶりを発揮(褒めてます)。華麗なる転向いや転身を遂げていたのであります。


監督兼主演作品でアカデミー賞を総なめした「許されざる者」(1992年)では不覚にも途中で寝てしまった苦い経験を踏まえつつ決死の覚悟で観た「ミリオンダラー・ベイビー」(2004年)で度肝を撃ち抜かれましたよ、はい。

なんだ、これ女性版ロッキーのサクセスストーリーじゃんと思いきや、中盤ヒロインが試合中の事故で半身不随に。えっ何・・・ズッシーンと重いテーマにいきなり落とす。もう最後は観ているのが苦しくなるような内容。この映画で二度目のアカデミー作品賞・監督賞をダブル受賞しました。御年74歳の時のこと。それからは彼の作品が製作される度にわたくし個人としても注目せざるを得ない唯一無二の映画監督となり今に至ります…。あっ、前置きが長くなりましたがここからが本題。



今日紹介する一本目はこの「ミリオンダラー・ベイビー」の前年に公開された

『ミスティック・リバー』(2003年)

アメリカの「今いるここで咲けない」けれど「ここから出で行くこともできない」宿命とは・・・

ボストン出身のデニス・ルヘインが自身の故郷を舞台に描いてアンソニー賞を受賞した長編ミステリーが原作のこの映画、わたくし、この夏再鑑賞しました。ストーリーの輪郭、映像、役者の演技・・・あぁそうそうと記憶が甦り、主人公3人の視点から自分では選択できない運命の残酷さを10年ぶりに味わいましたね。ずっしりと。

そして驚くべきことにというか、ありがたいことに、真犯人をすっかり忘れているよーわたし😲😲😲。そんでもって2度目でも「そんなー!」な人物が真犯人でしたよ。😲😲😲ネタバレになりますのでこれだけお伝えしておきます。オープニングの下水溝に落ちたボールのエピソード、娘を殺されたショーン・ペンが語る「もし(少年だった)あの時、車に乗っていたのが自分だったら」のセリフ、時折挟み込まれるミステックリバーの暗い川の流れ、殺されてしまった娘が街を出て行こうとしていたこと、ラストシーンのパレードを見物する登場人物それぞれの表情。これらに真犯人と等しくこの映画の重要なテーマが隠されています。ミステリー・サスペンス映画のエンターテインメント性と重厚な人間ドラマを両立させたこの作品、必見ですよ。そして、エンドロールのゆったりとしたテーマ音楽の流れにDirector of photography(撮影監督) Tom Stern(トム・スターン)の文字。あぁやっぱり。

ミリオンダラー・ベイビーと同じ撮影監督。皆さんこの名前憶えておいてくださいね。脚本は「LAコンフィデンシャル」のブライアン・ヘルゲランド(こちらも、あぁ・・・)

続く2本目は

『グラン・トリノ』(2008年)

・・・罪の意識から逃れられない孤独な男を救ったのは・・・

主人公ウォルト(クリント・イーストウッド)は50年間フォードの組立工を勤め上げ、隠居の身ながら妻に先立たれたばかりの独居老人。心を許すのは愛犬デイジーだけ。古い価値観の偏屈ジジイでそれゆえ2人の息子家族とも疎遠。隣に越してきたモン族家族を差別語で罵る。アジア系、ユダヤ系、黒人への罵詈雑言、白人にも容赦なし。イタリア系、アイルランド系へのエスニックジョークとカトリック教会の偽善を揶揄するシニカルなセリフ。こんなオヤジが身内や隣人だったら本当に災難だよーと思わせるウザさ演技全開。総菜売り場でポテトサラダ買おうとしたら「子供がかわいそうだ」って説教するタイプ。

で彼の宝物が自分が組み立てた72年製「グラン・トリノ」なわけ。ピカピカに磨き上げられた工具とともに新車同然に手入れされてガレージに保管されているこの宝物を、隣のモン族の若者タオが同族のチンピラに命令されて盗みに入ったことからウォルトの人生が変わり始めるというお話。寡黙だけれども頭がよく勤勉なタオをだんだん受け入れて友人として認めていく過程、か弱い女の子は男が守るという価値観が崩れ去った時の茫然自失の表情と手に持つグラスを落としてしまうベタな反応。小憎らしいクソオヤジがだんだん人間味のある人物へと変わっていく。彼を偏屈にした朝鮮戦争での惨たらしい体験をタオに話すシーンが抑制が効いていて印象に残る。衝撃の(と言われる)ラストについてはあえて触れません。皆さんの目と心で確かめて欲しい名作です。撮影監督はお約束のトム・スターン。脚本は本作がデビュー作となるニック・シェンク。(メモメモ)

そして最後の一作は

『ヒアアフター』(2010年)

・・欠けている何かを補うのは?生と死と希望の物語・・・

これ、意外に日本であまり話題にならなかった映画。

日本での公開が2011年の東日本大震災直前だったためリアルな津波シーンが災いして公開打ち切りになった不運の名作ともいえる作品。内容は3つの物語が同時進行しながら、ラストの不思議な邂逅へと繋がっていく構成。一つは強烈な臨死体験から現実に立ち帰れずジャーナリストとしての地位を失っていくフランス人マリーの物語。二つ目はロンドンに住む双子の兄を交通事故で亡くしたばかりの孤独な少年マーカスの物語。そして三つ目は自分の霊視能力を呪いと嫌悪するサンフランシスコに住む霊能者ジョージの物語。「イーストウッド版大霊界」ともいうべき、臨死体験、霊視、死後の世界を扱ったスピリチュアル系というかオカルト系映画。こんな際どいテーマをどう料理したのか?監督の腕の見せ所。冒頭で「異空間への旅へと誘う」と書きましたが、この作品はまさにそれ。映画でしか表現し得ない「作り話」を主人公と追体験したような気分にさせるエレガントな演出。脱帽しましたよ。ホント。現実には死後の世界も霊視も信じてないけどね・・・。

ラストの三人が巡り合う偶然から見つけた、ほんの少しの幸運のようなものがじんわりと感動の余韻となって、エンディングのラフマニノフのピアノコンチェルトが優しく響きましたわ。黒地に浮かび上がる撮影監督は忘れちゃいけないトム・スターン。脚本は大ヒット作「ボヘミアン・ラプソディ」の原案を手がけたピーター・モーガン(あぁ・・・知らない人だ)

そう、イーストウッドの作品はいつも静かに始まり静かに終わる。エンドロールを眺める至福の時間。皆さんにも是非、追体験してほしい映画です。



いかがでしたか?これを読んでクリント・イーストウッド作品に少しでも興味が湧いてくれたら、是非ご鑑賞くださいませ。ちなみに彼は90歳のご高齢ながら今も現役バリバリで監督作品を精力的に発表し続けています。そして2020年のコロナウイルス感染症拡大。この世界中を襲うパンデミックを彼は今、どう肌で感じどんな視点から状況を見つめているのでしょうか。コロナ収束後の作品世界にも期待を寄せてしまいます。どうか一刻も早くコロナ禍が終わりを告げ、クリント・イーストウッド監督の新作を劇場のスクリーンで堪能できる日が来ることを願っています。

まだまだ続くステイホーム時間。映画がきっと皆さんの時間を豊かにしてくれることを願って、機会がありましたら、またお邪魔いたしますよー(^_-)-☆




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